魚の小型化とは
魚の小型化とは、その言葉のとおり魚が小さくなるということ です。
その原因として考えられている理由は次のとおり。
乱獲 地球温暖化で海水温が上昇したことによる酸素不足 にゃぶり
そうなのです。
魚の小型化の原因には、乱獲と地球温暖化で海水温が上昇したことによる酸素不足のふたつ が考えられます。
乱獲は人間が海からの恵みを過剰に獲りすぎたため、温暖化に関しては近代的な人間活動により二酸化炭素を多く排出してしまったためです。
乱獲による魚の小型化 混獲や乱獲などにより魚の数が減ると、小型・若齢で成熟する魚の割合が高くなる原因について解説します。
魚の自然死亡と漁獲死亡とは 魚が死ぬ理由は自然死亡と漁獲死亡の2種類があります。
たとえば、サメの場合は小さいうちに死んでしまうサメが多いのですが、その後は寿命まで生きると考えられています。
一般的な魚類も体の成長に伴い、自然死亡率は減少していきます。
にゃぶり
人間が海に進出したことにより、ある程度成長した魚は漁獲によって死亡するようになりました。
そのため、魚類は体の成長に伴い、自然死亡率は減少していく一方で漁獲死亡率は高くなっていきます。
個体数が減ると早く成熟する 混獲や乱獲などにより個体数が減ると魚は小型・若齢で成熟する遺伝形質をもつ個体の割合が高くなります 。
このことを進化的応答(evolutionary response)と呼びます。
つまり、小型・若齢で成熟する個体の割合が高くなることは環境に対応した個体の生理的な変化といえます。
若齢化の流れ 乱獲により魚の数が減ると、ライバルが減るため食べることのできるエサの量が増えます。
エサの量が増加した結果、栄養状態が改善されて成長速度が速くなります。
成長速度が速くなることで通常よりも若齢で成熟するということになります。
魚の数が多い時期には成熟開始年齢は高齢化、魚の数が少ない時期には若齢化の傾向 がみられるようです。
なぜ魚が小さくなるのか 北海北西産マダラの生殖特性における長期的変異 (1970 vs. 2002)
北海北西産マダラの例です。
魚の成熟率と全長の関係は上の図のようになっています。
にゃぶり
1970年と2002年を比較すると魚が若齢化すると小型化するのがわかるね!
魚が若齢化すると親魚が小さくなります。
そうなると、卵や生まれてくる子どもの魚の大きさも小さくなります。
乱獲に伴う北海北西産マダラの個体群の生物特性の遺伝的変異
このような若齢化の傾向はホホジロザメ やクジラなどの大型生物でもみられており大きな問題 となっています。
また、生息数が減少している絶滅危惧種 のサメ「ヨゴレ 」や「クロトガリザメ」も小型化の傾向 が指摘されています。
海水温の上昇の影響で魚が小型化 地球温暖化による海水温の上昇の影響も魚の小型化の原因になっている可能性があります。
酸素不足による魚の小型化とは 地球の温暖化による魚の小型化とは、海水温が上昇し、酸素不足になることによって魚の大きさが小さくなること です。
Nature によると、2050年までに魚の全長や体重が14~24%減少する可能性がある とのことです。
海洋の酸素欠乏の原因は 温暖化によって海水の温度が高く変化すると魚の代謝が上がり、より多くの酸素を必要とします。
ところが、海水温が上がることによって、大気中の酸素は水には溶けにくくなるため、海中の酸素量が減ってしまいます。
海中の酸素量が減ってしまった結果、魚の成長が妨げられて小型化してしまうのではないかと考えられています。
また、「Global Change Biology」誌の研究によると、今後数十年の間に、この海水温の上昇による酸素不足が魚類の成長を30%も阻害する可能性 があるそうです。
小型化が危惧される魚の数 小型化が危惧される魚の数は75%以上 にものぼることが予想されています。
小型化の程度が最も大きいのはインド洋の24%で、次いで大西洋の20%、太平洋の14%です。
海洋温度が1度上昇するごとに、マグロのような活動的な魚は30%も縮小する可能性があり、サケ目サケ科のブラウントラウトのような活動性の低い種は18%の縮小にとどまる可能性があります。
魚が小型化することで、温暖化1度につき約340万トンの漁獲高が減少する可能性があるため、人間にとっても大きな問題 です。
サメも小型化 魚の小型化の問題はサメも無関係ではありません。
米国南東部沿岸に生息するサメが小型化 アメリカのノースカロライナ州オンズロー湾で約50年に渡って12種のサメのサイズを調査 したところ、10種類のサメが小型化していることが明らかになりました。
小型化が35%と最も進んでいるヤジブカ(メジロザメ)は食べやすい肉、大きなヒレの需要が高くサメ漁の対象種として乱獲 されていました。
また、釣り人たちからの人気も高く、ヤジブカ(メジロザメ)の個体数は1970年代から1990年代前半の間に3分の2に減少 したとみられています。
にゃぶり
同じく個体数が減少しているサメ「ヨゴレ」やクロトガリザメにも小型化の傾向 があるようです。
ジンベエザメも小型化 また、ナショナル ジオグラフィック によると、世界最大の魚類として人気のジンベエザメ も小型化しているそう。
ジンベエザメの研究チームが数十年分の観測データを見直したところ、1990年代中ごろに発見された最大の個体は全長13mだったのに対し、2000年代初めには10m、5年前には8mと、年を追うごとに最大サイズが小型化しているだけではなく、平均サイズも小型化 していたそうです。
サメの小型化に対して思うこと サメの小型化について考えた時に真っ先に頭に浮かぶのがヨゴレです。
ヨゴレは太平洋戦争で悪名が高くなったサメで全長4mの大型のサメといわれています。
わたしはサメの動画やドキュメント番組を見ることが好きですが、大きなヨゴレを見たことがありません。
ヨゴレは絶滅危惧種の中でも一番絶滅が近い深刻な危機(CR / Critically Endangered)と評価されています。
サメの保全に力を入れない日本ですらヨゴレには規制をかけているような状況です。
ヨゴレは個体数が減少しているので動画が少ないという理由もあるかと思いますが、とにかく小さいんですよね。
イメージでいうと、ツマグロ みたいな感じでしょうか。
※大きなヨゴレの動画をご存知の方はお知らせください。
小さなヨゴレを見るたびに「やっぱりヨゴレは小型化しているのかな」とか「大きなヨゴレはもういないのかな」と思ってしまいます。
個体数に問題がない、もしくは深刻な状況に陥っていないイタチザメ 、オオメジロザメ 、ヨシキリザメ 、アオザメ 、ホホジロザメなどについては大きいな個体の動画や写真を目にすることがあります。
ヨシキリザメなんて、ときどきびっくりするくらい大きな子もいますよね。
乱獲されて個体数の少なくなってしまったサメの小型化が進んでいるというのはとても残念なことです。
だって、海の中にあんなに大きな生きものがいるなんてロマンがあるじゃないですか。
ただでさえ乱獲による若齢化や小型化という問題がある上に海洋の酸素欠乏による小型化の可能性まであるというのは、大型のサメへのロマンを打ち砕くものになるかもしれません。
絶滅してしまうよりは小型化しても生き延びてくれる方がいいのですが、大型のサメたちがこれから先の世界でもそのままでいてくれることを願うばかりです。
参考文献・資料 Size Changes within a Southeastern United States Coastal Shark Assemblage: 1975–2018
米田道夫(水産総合研究センター 中央水産研究所)「国際漁場における漁業資源の管理技術向上にむけた生態学的研究」
田中秀具「ビワマス資源の年齢・体長組成(2014年) 」
成松庸二「マダラの繁殖特性の時系列変化と資源変動」
勝川木綿、渡邊良朗「選択的漁獲による生活史の進化」
ナショナル ジオグラフィック「ジンベエザメが小型化と研究報告 世界最大の魚類、大型個体はどこへ消えたのか」
CNN「海水温暖化で魚が小型化? カナダ研究チームが警告」
漁業の問題に関心がある人におすすめの本 魚が食べられなくなる日 / 勝川俊雄 東京海洋大学准教授の勝川俊雄さんの本。
漁業の問題が平易な表現で解説されているので知識がない人でもサクサク読める本です。
乱獲 の問題に関心がある人におすすめ。
日本の漁業が崩壊する本当の理由 / 片野歩 水産会社社員の片野歩さんの本。
Q & A形式でわかりやすく漁業の問題を解説。
現役漁師親子を交えた座談会は読み応えあり。
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サメの保護(保全)
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【海の食物連鎖】サメの生態系での役割とは?
サメの生態系での役割とは サメは高い栄養段階にいる高次捕食者であり、生態系・群集の要となる種です。 高次捕食者であるサメたちが栄養段階の低い下位生物群(サメより小さな魚)を食べることで、生態系・群集のバランスを保つという重要な役割を担っています。 また、サメによる下位生物群の消費は数のバランスを保つということだけではありません。 高次の捕食者であるサメが、下位生物群のうち、弱っている個体や病気の個体など、生存競争に勝てない生き物を食べることで、健全な生き物を生き残らせるという役割を果たすのです。 このよう ...
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