アオザメはホホジロザメと同じネズミザメ科のサメです。
黒々した大きな目元が印象的ですよね。
このブログでは、アオザメの特徴などを解説します。
アオザメ(Isurus oxyrinchus)とは
まず、アオザメの基本情報を紹介します。
アオザメの基本情報
- 標準和名
- アオザメ(青鮫)
- 別名
- カツオザメ
- 英語名
- Shortfin mako shark
- 学名
- Isurus oxyrinchus
- 保全状況
- 絶滅危惧種:危機(EN / Endangered)
- 分類
- ネズミザメ目ネズミザメ科アオザメ属
- 危険度
- シャークアタックの回数
- 9件のサメ事故(1580-2020年)
ボートや船への攻撃は20回 - サメの攻撃が原因の死亡事故
- 3件のサメによる死亡事故(1580-2022年)
- 生活様式
- 遊泳性
- 分布域
- 太平洋、インド洋、大西洋の暖海域に広く分布、温帯と熱帯の海に暮らすコスモポリタン
- 日本国内での分布域
- 南日本の太平洋側に多い、日本海側の九州
- 生息場所
- 外洋、ときどき沿岸
- 水深
- 0〜750m(通常100〜150m)
- 大きさ
- 平均的な全長は3.2m
- 最大全長
- 最大4.45m
- 体重
- 〜545kg
- 平均寿命
- 28〜35歳
※サメの年齢を推定するのは難しく、多くのサメが過小評価されている可能性があるので今後さらに長くなる可能性もあります。
- 最大寿命
- 35歳
- 繁殖方法
- 卵胎生
- 妊娠期間
- 15〜18か月
- 産仔数
- 4〜30匹
平均12匹 - 幼魚の大きさ
- 60〜70cm
- 繁殖サイクル
- 3年
- 成熟年齢
- オス:8歳、メス:19歳
- 成熟サイズ
- オス:約200~215cm、メス:約275~290cm
- 歯の形状
- 細くて長い歯
- 泳ぐ速度
- 時速74キロ
- 性格
- -
- 習性
- -
- 1日の過ごし方
- -
- 好きな食べ物
- カジキ、マグロ、他のサメなど動きの速い遠洋魚、イカ、海洋哺乳類やウミガメ
- 海の仲間のお友達
- -
- 生息年代
- アオザメ属が現れたのは古新世。中新世になると、現代のアオザメとホホジロザメに分かれた
- 命名された年
- 1809年
- サメが住んでいる水深
※水深200mの深海を星5と評価
- 巨大ザメ指数
※最大全長が5m以上のサメを星5と評価
- 水族館で会える可能性
- ペットとして飼育できる可能性
アオザメの生態
ここではアオザメの生態について解説します。
アオザメの特徴とは
アオザメは外洋に生息する大型の捕食性サメです。
全長は最大で4.45m、体重は545kgに達することもあります。
アオザメの歯
アオザメの細くて長い歯は滑りやすい魚を捕まえて食べるのに適した薄くて鋭い歯です。
歯の形状は単尖頭の牙状で、内側に向かってやや湾曲しています。
アオザメの色とは
アオザメの体色は背側が深いメタリックブルーでお腹側は白で、胴体の青と白の境界線ははっきりしています。
また、アオザメの鼻の下と口の周りは白いのが特徴です。
同じアオザメ属のバケアオザメは暗い色味をしているため、この口の周りが白さでバケアオザメとアオザメを区別することができます。
アオザメの分布域
アオザメの分布・生息域は広く、世界中の海の熱帯および温帯海域に生息しています。
北米では、太平洋ではカリフォルニアからチリまで、大西洋ではカナダのグランドバンクスからアルゼンチンまで、メキシコ湾とカリブ海を含む範囲に生息しています。
東部大西洋では、ノルウェーから南アフリカまでの地中海を含み、インド洋では南アフリカからオーストラリアまで生息しています。
西太平洋では、日本からニュージーランドまで、中央太平洋ではアリューシャン列島からソサエティ諸島まで生息しています
アオザメの日本での分布域
アオザメの日本での分布域は南日本の太平洋側です。
佐賀県唐津市の高島沖に全長3mのアオザメ
2015年12月19日の朝、佐賀県唐津市の高島沖で全長3メートル超のアオザメが定置網にかかりました。
島で40年以上漁をする漁師さんも「初めて見る大きさ」とおどろいたとか。
アオザメは普段は沖にいるため、沿岸の定置網にかかることは珍しいそうです。
高島といえば、宝くじが当たるという宝当神社が有名ですが、大物のサメも呼び寄せるのでしょうか 笑
雄大な海が広がる地域なので大物のサメがいることにおどろきはありませんが、目撃談はこれまで聞いたことがありません。
大分県別府市の別府湾の沖に全長3.4mのアオザメ
2020年9月4日の夜、大分県別府市の別府湾沖で流し網漁をしていた漁船がサメを捕獲しました。
このサメは全長は約3・4メートルのアオザメです。
アオザメの生息域
アオザメは主に外洋に生息するサメです。
大陸棚が短い場合は海岸近くでも見られるとか。
表層から約500mまでの範囲に生息し、通常は16℃以上の海域に生息しています。
アオザメの泳ぐ速さとは
アオザメの泳ぐ速さは遊泳速度が時速40キロ、最高速度は時速74キロで、サメの中では最も速く早く泳ぐことができ、地球上で魚類の中でも速い魚のひとつに数えられます。
また、アオザメの運動能力の高さは泳ぐ速度だけではなく、驚異的な跳躍力をもつことでもで知られています。
アオザメの体温保持のメカニズム
アオザメはホホジロザメやクロマグロやカツオなどのマグロ類(硬骨魚類)と同様にまわりの水温よりも5~15度ほど高い体温を保つことができる特殊な血管構造をもっています。
カツオなどのマグロ類(硬骨魚類)はサメ(軟骨魚類)と同じ魚類ですが、その進化については根っこから異なります。
アオザメなどのネズミザメの仲間たちとマグロ類を合わせて20種ほどがこのような特徴を備えているとのこと。
これにより、アオザメは冷たい水の中で狩りをする際に速い遊泳スピードを維持できるより迅速に動きができるという大きな利点があります。
また、アオザメは回遊性が高いことで知られており、毎年、長い距離を移動する個体もいます。
この回遊距離の長さにおいても、まわりの水温よりも5~15度ほど高い体温を保つことができる特殊な血管構造が役に立っているようです。
なお、アオザメなどのネズミザメの仲間たちとマグロ類の体温は30度ほどしかなく恒温動物と比較するとはるかに低いです。
つまり、アオザメは変温動物でもなく恒温動物でもない独特な立ち位置に存在していることになります(Ref.1 pp.151-152)。
アオザメはジャンプ(ブリーチング)する?
アオザメはジャンプ(ブリーチング)するができますが、ジャンプするのを見るのは非常に稀です。
水面近くで獲物を追いかけるときや、釣り糸に引っかかったときだけ水面から飛び出すそうです。
アオザメの好きな食べ物
アオザメはさまざまな獲物を食べます。
比較的大きなマグロ、カジキなど動きの速い遠洋魚、他のサメや小型の海洋哺乳類、イカ、ウミガメ、さらには死んだ生き物も食べます。
アオザメは人食いザメなの?人間への危険性は?
アオザメは人間に対して攻撃的なサメだとみられています。
ダイバーに遭遇すると、8の字を描くように泳ぎ、口を開けて近づいてくることが多いそうです。
その見た目と性格の割には、これまで人間を攻撃してきたことはほとんどありません。
おそらく、アオザメの主な生活域が外洋であり、人間と接する機会が少ないからなのかもしれません。
1580年から2021年までの間に起きたアオザメによるシャークアタックは9回で、そのうち1回は死亡事故となっています。
アオザメは危険で凶暴な人食いザメというよりも、そのパワーとスピードが人間にとって危険なものです。
2004年7月15日和歌山県すさみ町沖では、全長3.3m、体重350㎏のアオザメが釣り船式島丸に飛び込み、尾びれに当たった釣り客が胸の骨を折る重傷を負うというサメ事故が発生しました。
このようにアオザメによるサメ事故は釣り上げられた後にボートを損傷したり、漁師を傷つけたりすることが多いそうです。
アオザメは大型のサメでありながら死亡事故は1件しかないサメですが、その巨体による事故には気をつけたいものですね。
アオザメとヨシキリザメの違いとは
日本語のアオザメはアオザメ(Isurus oxyrinchus)です。
ところが、英語のブルーシャークはヨシキリザメのことです。
アオザメは英語で“Shortfin mako shark”といいます。
英語名の“mako”とは、マオリ語で「サメ」を意味しています。
アオザメの体色はメタリックブルーです。
一方、ヨシキリザメの体色は海のような深い青色(インディゴブルー)です。
アオザメとヨシキリザメは顔立ちがまったく違います。
こちらがアオザメ。
©︎unsplash同じネズミザメの仲間であるホホジロザメと少し似ています。
こちらがヨシキリザメ。
ヨシキリザメはメジロザメの仲間です。
鼻先が長く、全体的にひょろっとしています。
アオザメとメガロドン
巨大なホホジロザメとしてよく知られているメガロドン。
ところがこのメガロドンはホホジロザメではなく、アオザメとそっくりという説が出てきました。
今後の研究が気になるところです。
アオザメと人との関わり
世界中のアオザメはスポーツフィッシングなどで商業的に狙われたり、他の種を対象とした漁業で誤って混獲されたりしています。
南カリフォルニア、ニュージーランド、南アフリカで行われている大規模なスポーツフィッシングでは釣り上げたときに派手にジャンプするアオザメは人気があります。
また、アオザメは東南アジアではフカヒレスープへの需要、欧米市場では肉の質の高さで需要、さらに肝油はビタミンAの供給源として需要があるようです。
食料としてもアオザメは人気が高く、このことが個体数に悪影響を与えていると考えられています。
メカジキやキハダマグロなどのマグロ類を対象としたはえ縄漁具を使用する漁業者はアオザメも捕獲しています。
また、アオザメを狙って捕獲するための漁業では、アオザメ用のはえ縄や刺網漁具を使用しています。
ところが、インド洋の中でもアラビア海(Arabian Sea)とベンガル湾(Bay of Bengal)の沿岸部では、マグロ漁業とうたいながら、実際はマグロが混獲されるサメ漁業と化しているという指摘もあります(Ref.2)。
アオザメは絶滅危惧種?
アオザメは絶滅危惧種?
アオザメは絶滅危惧種:危機(EN / Endangered)と評価されています。
乱獲によって、世界中でアオザメの個体数が減少しており、研究者たちはアオザメが絶滅の危機に瀕していると考えています。
アオザメを商業的に利用することだけではなく、保護・管理活動を強化しなければ、アオザメの個体数は減少し続け、絶滅してしまう可能性があります。
アメリカ海洋漁業局(NMFS)は、アオザメを管理対象の遠洋性サメのリストに含めています。
また、アオザメは1995年の「国連漁業協定」(UNFSA)にも掲載されており、すべての漁業国がアオザメを保全するための措置を実施することが求められています。
しかしながら、報告されていない漁獲データ、アオザメの移動パターンが大規模であることなどから、世界的な個体数の状況に関する正確な情報を収集することは困難なのが現状です。
絶滅 | 絶滅危惧種 | 絶滅リスクは低い | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1.絶滅(EX) | 2.野生絶滅(EW) | 3.深刻な危機(CR) | 4.危機(EN) | 5.危急(VU) | 6.準絶滅危惧(NT) | 7.低懸念(LC) |
どこにもいない | ほぼ絶滅 | かなりやばい | やばい | やばそう | そろそろやばい | 今は心配なし |
メガロドン | - | ヨゴレ、シロワニ、アカシュモクザメ | アオザメ、ニタリ、レモンザメ | オオメジロザメ、ホホジロザメ、クロヘリメジロザメ | イタチザメ、ヨシキリザメ | ネコザメ |
- | - | イリオモテヤマネコ、ラッコ | トキ、トラ | パンダ | トド | - |
- | - | - | ニホンウナギ | クロマグロ | - | ブリ |
※この他に、データ不足で正しく評価できない情報不足種 (DD / Data Deficient)、まだ評価がされていない未評価種 (NE / Not Evaluated)というふたつのカテゴリーがあります。
※IUCNレッドリストでは、未評価種 (NE)、情報不足種 (DD)、低懸念(LC)、.準絶滅危惧(NT)、絶滅危惧種(危急、危機、深刻な危機)、野生絶滅(EW)、絶滅(EX)の9つのカテゴリに分類しています。
※レッドリストについては『絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ【2021年10月版】』で解説しています。
アオザメは3段階ある絶滅危惧種の中で2番目に絶滅の危機に瀕している絶滅危惧種:危機(EN / Endangered)と評価されています。
また、ワシントン条約(CITES)では、現在は必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を規制しなければ絶滅のおそれのあるものとして附属書Ⅱに掲載されています。
アオザメと文学『老人と海』
アオザメは、1952年に出版されたアメリカの作家アーネスト・ヘミングウェイの世界的なベストセラー『老人と海』に登場するサメです。
スポーツフィッシングに熱心だったヘミングウェイは、1963年にマイアミ(フロリダ州)から東へ81kmに位置するバハマ諸島のビミニ沖でロッドとリールを使って356kgのアオザメを釣り上げているそうです。
アオザメを水族館で見たい
近年、水族館でアオザメを見たという人も増えてきていますが、飼育が難しく、すぐに死んでしまいます。
ここではアオザメの飼育が難しい理由やこれまでアオザメを飼育したことのある水族館の一覧を紹介します。
アオザメの飼育は難しい?
アオザメは水族館での飼育が難しいサメです。
これまでのアオザメの最長飼育記録は、2001年ニュージャージー水族館でわずか5日間です。
日本国内の水族館でも近年何度か飼育を試みていますが、2日以内に展示を終了しています。
アオザメの飼育がうまくいかない理由は、水槽のガラスを認識せずぶつかってしまったり、餌を食べなくなってしまうためです。
自然下では何千キロも移動し、速いスピードで泳ぐことを好むアオザメを水族館で飼育するのはまだまだ難しいようです。
アオザメを飼育したことがある水族館の一覧
日付 | 捕獲場所 | 水族館 | 概要 |
---|---|---|---|
1970年代初頭 | - | カリフォルニアシーワールド | 0.9mのアオザメ。 |
1978年夏 | カリフォルニア州サンディエゴ沖 | カリフォルニアシーワールド | 1.0〜1.4mの2匹のアオザメを飼育。 捕獲後、ポンプと酸素を備えたサメの輸送ボックスで運ばれた。 輸送時間はいずれの場合も約1時間。 どちらのサメも大水槽に適応できず、アクリルの壁に衝突。 底に沈んで死亡。 |
2001年 | アトランティックシティから32km沖 | ニュージャージー水族館 | ニュージャージー水族館では全長1.07m、体重6.8kgアオザメを5日間飼育。 到着時の状態は良好。 餌を食べなくなり、数千匹のニシンにも興味を示さなかった。その後、衰弱。 |
2016年1月15日 | 漁師の網にかかった | 串本海中公園 | 和歌山県の串本海中公園で幼い個体のアオザメ。 漁師さんの網にかかった「アオザメ」を緊急搬入、搬入時には既に衰弱。 トンネル水槽にて飼育を試みたが死亡。 |
2019年1月5日 | - | 須磨海浜水族園 | 神戸市立須磨海浜水族園(スマスイ)が展示を試みるも1月6日までに死亡。 |
2019年2月8日 | - | むろと廃校水族館 | 情報は写真のみ。搬入翌日は生存していた様子。 |
2019年11月20日 | - | 葛西臨海水族園 | アオザメは二日後に死亡。 |
2020年6月12日 | 定置網漁 | 横浜・八景島シーパラダイス | アオザメは二日後に死亡。 |
2016年1月15日和歌山県の串本海中公園のアオザメ
漁師さんの網にかかった「アオザメ」を緊急搬入し、トンネル水槽にて飼育を試みましたが回復に至らず死亡いたしました。まだまだ幼い個体でしたが、泳ぐ姿には危険種独特の迫力がありました。
2019年2月8日むろと廃校水族館のアオザメ
本日から3連休、イベント出展の準備もあり、むろと廃校水族館に来ています。
昨日来たばかりの珍しい転入生が水槽を泳いでいました!!!(事務局・松宮)
出典:日本ウミガメ協議会 @umigame_info ツイッター
ヨシキリザメを展示したこともあるむろと廃校水族館。
外洋種の飼育に力を入れているのでしょうか。
2019年11月20日葛西臨海水族園のアオザメ
2019年11月20日(水)、「大洋の航海者 マグロ」水槽にアオザメを搬入しました!シノノメサカタザメやイタチザメと同じ場所で泳いでいます。出典:葛西臨海水族園[公式]@KasaiSuizokuen
2019年11月22日朝、残念ながら、葛西臨海水族園のアオザメは展示が終了となりました。
2020年6月13日横浜・八景島シーパラダイスのアオザメ
水族館「ドルフィン ファンタジー」の円柱水槽にて、漁師さんの協力で定置網漁に入ったアオザメを受け入れ、昨日より展示を開始しております。
※生物の状態により展示を中止させていただく場合がございますのでご了承ください。#シーパラ #八景島 #アオザメ pic.twitter.com/WllH8NyTv0— 横浜・八景島シーパラダイス公式 (@_seaparadise_) June 13, 2020
2020年6月14日朝、残念ながら、横浜・八景島シーパラダイス水族館「ドルフィン ファンタジー」で飼育していたアオザメが死亡したため、展示が終了となりました。
おわりに
子供のころ、サメ図鑑で初めて名前を覚えたのがアオザメだったように記憶しています。
いつか目の前で見てみたいアオザメ。
水族館で会えるチャンスはなかなかありませんが、会える日が来ますように。
参考文献一覧
(2)サメ17種が絶滅の危機、珍味として乱獲される種も レッドリスト最新版