エドアブラザメは深海ザメです。
水族館で飼育されることはほとんどないためなかなか出会う機会はありません。
このブログでは、エドアブラザメの特徴などを解説します。
エドアブラザメとは
まず、エドアブラザメの基本情報を紹介します。
基本情報
エドアブラザメ(学名:Heptranchias perlo 英語名:Sharpnose sevengill shark)は、カグラザメ目カグラザメ科(エドアブラザメ属、カグラザメ属、エビスザメ属)のうちのひとつ、エドアブラザメ属(Heptranchias)に属する唯一のサメです。
- 標準和名
- エドアブラザメ(江戸油鮫)
- 別名
- -
- 英語名
- Sharpnose sevengill shark
- 学名
- Heptranchias perlo
- 分類
- カグラザメ目(Hexanchiformes)カグラザメ科(Hexanchidae)エドアブラザメ属(Heptranchias)
- 命名された年
- 1788年(Bonnaterre)
- 保全状況
- 準絶滅危惧(NT / Near Threatened)
- ワシントン条約(CITES)
- 掲載なし
- 最大全長
- オス:137cm、メス:140cm
- シャークアタックの回数
- 0件のサメ事故(1580-2023年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 0件のサメによる死亡事故(1580-2023年)
- 危険度
- 水族館で会える可能性
- ペットとして飼育できる可能性
エドアブラザメと人間との関わり
エドアブラザメは漁業の対象種ではありませんが、底引き網やはえ縄漁業を使った漁業で混獲されています。
深海漁業(トロール漁)の世界的な広がりにより、エドアブラザメの乱獲や混獲のリスクが高まっている可能性があります。
フロリダ自然史博物館やフィッシュベースには、肉には軽い毒があるという記載がありますが、問題なく食べている人の食レポがネットでは出てきます。
もしかすると、地域によって発生するシガテラ毒のようなものかもしれませんね。
保全状況
エドアブラザメは絶滅危惧種?
エドアブラザメは準絶滅危惧(NT / Near Threatened)と評価されています。
絶滅 | 絶滅危惧種 | 絶滅リスクは低い | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1.絶滅(EX) | 2.野生絶滅(EW) | 3.深刻な危機(CR) | 4.危機(EN) | 5.危急(VU) | 6.準絶滅危惧(NT) | 7.低懸念(LC) |
どこにもいない | ほぼ絶滅 | かなりやばい | やばい | やばそう | そろそろやばい | 今は心配なし |
メガロドン | - | ヨゴレ、シロワニ、アカシュモクザメ | アオザメ、ニタリ、レモンザメ | オオメジロザメ、ホホジロザメ、クロヘリメジロザメ | イタチザメ、ヨシキリザメ | ネコザメ |
- | - | イリオモテヤマネコ、ラッコ | トキ、トラ | パンダ | トド | - |
- | - | - | ニホンウナギ | クロマグロ | - | ブリ |
※この他に、データ不足で正しく評価できない情報不足種 (DD / Data Deficient)、まだ評価がされていない未評価種 (NE / Not Evaluated)というふたつのカテゴリーがあります。
※IUCNレッドリストでは、未評価種 (NE)、情報不足種 (DD)、低懸念(LC)、.準絶滅危惧(NT)、絶滅危惧種(危急、危機、深刻な危機)、野生絶滅(EW)、絶滅(EX)の9つのカテゴリに分類しています。
※レッドリストについては『絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ【2021年10月版】』で解説しています。
エドアブラザメの個体数は不明ですが、水揚げ量が減ったことからIUCNレッドリストではエドアブラザメを準絶滅危惧(NT / Near Threatened)と評価しています。
絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ【2021年10月版】
ワシントン条約(CITES)
- ワシントン条約(CITES)
- 掲載なし
エドアブラザメはワシントン条約(CITES)には掲載されていません。
ワシントン条約(CITES / サイテス)のリストに掲載されたサメ類と日本の対応について
危険性
- 危険度
- シャークアタックの回数
- 0件のサメ事故(1580-2020年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 0件のサメによる死亡事故(1580-2020年)
エドアブラザメは捕獲されると攻撃的になり、噛みつこうとするため水揚げの際には注意が必要なサメです。
小さすぎるため人間にとって危険なサメではありません。
エドアブラザメの生態
エドアブラザメは小型の深海ザメです。
ほとんどのサメの鰓孔(えらあな)は5対ですが、エドアブラザメの鰓孔は7対あります
見た目の特徴(形態)
- 7つの鰓孔(えらあな)
- 緑色の大きな目
- 背びれがひとつしかない
- 小型の深海ザメ
- 下顎の歯は長方形に近く、上にギザギザがあるノコギリのような歯
エドアブラザメは英語名のSharpnose sevengill sharkという名の通り、尖った細い鼻先(=Sharpnose)をしています。
古代ザメと同じ7対の鰓孔(えらあな)
多くのサメのエラが5対なのに対して、エドアブラザメのエラは7対(=sevengill)です。
この7対の鰓孔(えらあな)というのは古代ザメの特徴です。
エドアブラザメの英語名は見た目の特徴をよく表しています。
エドアブラザメのエラは喉の下まで深く伸びています。
深海ザメのラブカも同じように深いエラを持っていることを思い出しました。
※ラブカのエラの数は6対。
背びれがひとつしかない
多くのサメの背びれは、第一背びれと第二背びれがありますが、エドアブラザメの背びれはひとつしかありません。
また、エドアブラザメの子ザメの背びれの先は真っ黒ですが、成長するにつれてこの色は薄くなっていくようです。
いつか大人のエドアブラザメに会える機会があったら、背びれの色を比較してみたいですね。
エドアブラザメとエビスザメの違い
エドアブラザメは同じカグラザメ科のエビスザメと混同されるようですが、見た目の特徴も異なります。
エドアブラザメ | エビスザメ | |
---|---|---|
分類 | カグラザメ目(Hexanchiformes)カグラザメ科(Hexanchidae) | カグラザメ目(Hexanchiformes)カグラザメ科(Hexanchidae) |
エラの数(鰓孔) | 7対 | 7対 |
水深 | 1000mまでの深海 | 水深150mより浅い表層 |
目の大きさ | 緑色の大きな目 | 目が小さい |
鼻先 | 尖っている | 丸い |
体色 | 斑点はない | 体全体に黒い斑点 |
歯
上顎の歯は鉤状(こうじょう)。
※鉤状とは、鉤(かぎ)のような形に曲がった形状のこと。
下の歯はノコギリの歯そのもののような長方形の歯をしています。
同じカグラザメ科のカグラザメも同じような歯をしています。
分布域と生息域
- 分布域
- 熱帯から温帯にかけて分布(北東太平洋を除く)
- 日本国内での分布域
- 駿河湾など
- 生息域
- おもな生息域は深海、大陸棚上から1000mほどの大陸斜面、1000m以下にも生息
- 水深
- 水深27~1000m
分布域
西大西洋では、ノースカロライナ州(アメリカ)とメキシコ湾北部からキューバ、ベネズエラ南部からアルゼンチンまで、東大西洋では、地中海を含むモロッコからナミビアまで分布。
インド洋ではインド南西部、アルダブラ島、モザンビーク南部、南アフリカ共和国の海域に分布。
太平洋では、日本から中国、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、チリ北部の沖合に分布。
エドアブラザメは分布範囲が広いことから、泳ぐのが得意で回遊距離が長い深海ザメなのかもしれませんね。
生息域
エドアブラザメは水深27~1000mでおもな生息域は深海です。
大陸棚上から1000mほどの大陸斜面に生息しています(サメ-海の王者たち-改訂版)。
通常は深海に生息していますが、海面近くで観察されることもあるそうです。
大きさ
- 平均的な大きさ
- 60〜120cm、平均的な全長は100cm
- 最大全長
- オス:137cm、メス:140cm
- 体重
- - kg
同じカグラザメ科のカグラザメは大型のサメですが、エドアブラザメは最大全長が140cm程度の小型の深海ザメです。
寿命
- 平均寿命
- -
- 最大寿命
- - 歳
エドアブラザメの寿命についてはわかっていません。
ライフスタイル
- 泳ぐ速度
- - キロ
- 性格
- -
- 1日の過ごし方
- 夜型。食事や活動は夜間。
- 好きな食べ物
- 小型のサメやエイ、硬骨魚類、エビ、カニ、ロブスター、イカ、コウイカ
エドアブラザメは多くのサメと同じく夜型です。
繁殖
- 繁殖方法
- 卵胎生(Ovoviviparity)
- 妊娠期間
- - ヶ月
- 一度に産む数
- 9〜20匹
- 子ザメの大きさ
- 約25cm
- 繁殖サイクル
- 調査中
- 成熟年齢
- - 歳
- 成熟サイズ
- オス:全長75〜85cm、メス:全長90〜100cm
エドアブラザメはお母さんザメがお腹の中で卵を孵化させて子ザメを産む卵胎生(Ovoviviparity)のサメです。
多くのサメと同じく、一度に産む子ザメの数は9〜20匹程度と少ないので、乱獲に弱いサメです。
そのため、深海魚に対する漁獲圧が高まり、個体数が減少した場合、現在準絶滅危惧と評価されているエドアブラザメは絶滅危惧種に移行するという可能性もあります。
エドアブラザメを水族館で見たい
エドアブラザメは深海ザメのためなかなか出会う機会もない上に、飼育が難しいサメです。
そのため水族館で見かけることはほとんどありません。
2023年1月、新江ノ島水族館でエドアブラザメが展示されましたが、わずか4日間で終わってしまいました。
飼育したことがある水族館一覧
エドアブラザメを飼育したことがある水族館は太平洋側の水族館だけです。
水族館名 | 飼育期間 | 大きさ | 性別 | 採集場所・方法 |
---|---|---|---|---|
下田海中水族館(静岡県) | 2010年5月28日〜? | 不明 | 不明 | 静岡県東伊豆町北川沖の相模灘に仕掛けられた定置網 |
伊豆・三津シーパラダイス (静岡県) | 2016年3月17日〜? | 不明 | 不明 | 不明 |
アクアワールド 茨城県大洗水族館 (茨城県) | 2021年12月28日ごろ〜2021年内 | 不明 | 不明 | 不明 |
新江ノ島水族館(神奈川県) | 2023年1月19日(木)~2023年1月22日(日) | 50cm | メス | 駿河湾 |
参考文献一覧
(2)スティーブ・パーカー (著)、仲谷一宏 (監修)、 櫻井英里子 (翻訳)『世界サメ図鑑』ネコパブリッシング、2020年(第5刷)。
(3)仲谷一宏『サメ-海の王者たち-改訂版』ブックマン社、2016年(初版第1刷)。
(4)田中彰(監修)『美しき捕食者 サメ図鑑』実業之日本社、2021年(初版第3刷)。
(5)谷内透『サメの自然史』東京大学出版会、1997年(初版)。
(6) David A. Ebert (著), Marc Dando (著), Sarah Fowler (著), Rima Jabado (はしがき, 寄稿) “Sharks of the World” Princeton University Press,2021年
(7)松田裕之『海の保全生態学』東京大学出版会、2012年(初版)。
(8)Florida Museum “DISCOVER FISHES Heptranchias perlo”