今回は、サメの保全と環境問題、SDGsとのつながりについて解説します。
サメと人間の関係
世界的大ヒット映画『ジョーズ』のイメージでサメを恐ろしい人食いザメと思っている方も多いのではないでしょうか。
実際に、わたしがサメ好きというと、
「ジョーズのイメージしかない」
「人食いザメのどこがいいの?」
といわれてしまうこともしばしば。
人食いザメと恐れられるサメですが、人間にとって危険なサメはホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメの3種類をはじめとしたごく一部のサメです。
外洋に住むヨゴレも危険なサメといわれていますが、外洋のサメなのでまず遭遇することはありません。
また、サメに襲われて命を落としてしまうような深刻なサメ事故は世界中の年間平均で6件ほどです。
サメが絶滅危惧種になっている理由とは?
怖い生き物だと思われがちなサメですが、IUCNレッドリストでは、世界のサメ類のおよそ30%(168種)が絶滅危惧種と評価されています。
サメの30%が絶滅危惧種になっている理由は、乱獲、大気中に放出された二酸化炭素を海洋が吸収することによる海洋酸性化や海洋汚染による生息環境の喪失や悪化などです(参考記事:「サメが絶滅危惧種になってしまった原因とは?」)。
これらはわたしたちの人間が引き起こしていることばかりです。
また、IUCN SSC Shark Specialist Group (SSG)によると、1980年代以降、フカヒレを目的とした乱獲、混獲により死亡しているサメの仲間の数は毎年1億匹と推定されています。
このようにサメよりも人間の方がずっと怖いんです。
サメと環境問題(SDGs14)
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すという国際目標です。
SDGsでは、17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。
貧困に終止符を打つには、経済成長を促し、教育、健康、雇用機会を含む幅広い社会的ニーズを充足すること、および気候変動と環境保護に取り組む戦略が必須です。
海とSDGsといえば、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」が頭に浮かぶ人も多いでしょう。
ところが、サメの保全はSDGs14のみならず、他の目標の解決策にもなり得るのです。
サメとSDGsの目標1「貧困をなくそう」
違法なフカヒレ漁は貧困が原因になっていることもあります。
なぜかというと、フカヒレは高額で取引されるためです。
そこで、フカヒレ漁以外の新しい観光資源としてエコツーリズムでサメを活用することでSDGsの目標1「貧困をなくそう」の実現にもつながっていくかもしれません。
それは、経済的余裕がない中では、わずかな収入を得るために違法行為に加担することが起こりやすくなるためです。
地域社会にとっての保全という行為への価値を上げていくことで、その地域の人々が保全の担い手となることができます。
また、そのことは貧困からの脱出への一歩となるのではないでしょうか。
サメとSDGsの目標8「働きがいも経済成長も」SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」
ケージダイビング、サメダイビングなどのサメを観光に利用したエコツーリズムは沿岸地域の経済成長が期待されます。
サメを食用にすると、お金になるのは一回きりです。
ところが、生きたサメを観光資源として活用することで継続的な経済効果が期待されます。
このことは、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」の実現にも貢献するのではないでしょうか。
サメとSDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」
SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」は、目標14「海の豊かさを守ろう」と密接に関係しており、サメの保全にも重要な役割を果たします。
人間活動による温室効果ガスの排出量増加は、地球温暖化や海洋酸性化を引き起こし、深刻な環境問題となっています。特に、二酸化炭素は地球温暖化に最も影響を与える温室効果ガスであり、海洋酸性化の原因にもなります。
海洋酸性化は、サメを含む海洋生物の骨格や殻の形成を阻害し、繁殖や生存に悪影響を及ぼすことが懸念されています。
一人ひとりの温室効果ガス排出量削減は、地球温暖化対策だけでなく、サメの保全にもつながります。つまり、一人ひとりの行動を変えることで、サメを守ることができるのです。
まとめ:サメの保全のためにできるSDGsの取り組みからはじめよう!
SDGsの取り組みは、小さなことの積み重ねからはじまります。
たとえば、個人でもできるSDGsの取り組みは次のようなことがあります。
- 環境に優しい企業の商品を購入にする
- 捨てるよりもリサイクルを優先する
- 当たり前のように身近にあるもののありがたみを理解する
- 物を大事にして、すぐに捨てたりしない
- 絶滅しそうな生物がいることを思い出す
- ゴミをポイ捨てしない
- 自然や資源は有限であることを頭に入れておく
- 電気を無駄遣いしない
これらの取り組みはどれも簡単です。
確かに、一人の行動だけでは世界を変えることは難しいかもしれません。
しかしながら、それが世界中の人々に広がっていくとしたらどうでしょうか?
蝶の羽ばたきのようなわずかな変化であっても、それがあった場合となかった場合とでは、その後の状態が大きく異なってしまうというバタフライエフェクト(バタフライ効果)という現象があります。
つまり、一人ひとりの取り組みは世界という視点から見ると、とてもミクロかもしれませんが、SDGs達成という大きな目標に向かって行動することは、必ず世界を変えていく力となるのです。
難しいことは考えなくてもいいのです。
小さなこと、簡単なことから始めてみませんか。
それがやがて大きな力となり、SDGsへの貢献だけではなく、サメの保全にもつながっていくのではないでしょうか。
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