アカシュモクザメは水族館やダイビングでもおなじみのサメです。
一度見たら忘れることのできないハンマーみたいな頭の形が印象的ですよね。
このブログでは、アカシュモクザメの特徴などを解説します。
アカシュモクザメ(Scalloped hammerhead)とは学名:Sphyrna lewini 1834年
アカシュモクザメは、メジロザメ目 Carcharhiniformes、シュモクザメ科 Sphyrnidae、シュモクザメ属 Sphyrnaに属する8種のサメのうちの一種です。
分類Scientific Classification
- 界 Kingdom
- 動物界 Animalia
- 門 Phylum
- 脊索動物門 Chordata
- 綱 Class
- 軟骨魚綱 Chondrichthyes
- 亜綱 Subclass
- 板鰓亜綱(ばんさいあこう) Elasmobranchii
- 亜区 Subcohort
- サメ亜区 Selachii
- 上目 Superorder
- ネズミザメ上目 Galeomorphi
- 目 Order
- メジロザメ目 Carcharhiniformes
- 科 Family
- シュモクザメ科 Sphyrnidae
- 属 Genus
- シュモクザメ属 Sphyrna
- 種 Species
- アカシュモクザメ Sphyrna lewini
アカシュモクザメの基本情報
アカシュモクザメの基本情報を紹介します。
- 標準和名
- アカシュモクザメ
- 別名
- カネタタキ(川尻、紀州塩屋、和歌浦、佐賀)、ネンブツナガ(大洗)、ネンブツサメ(大津)、ヨカヨカ(那珂湊)、シュモク(伊豆諸島、小笠原諸島)、シュモクザメ(全国)、アカカセ(長崎)、ネンブツブカ(鹿児島)、カネウチ(参照)
- 英語名
- Scalloped hammerhead
- 学名
- Sphyrna lewini
- 保全状況
- 絶滅危惧種:深刻な危機(CR / Critically Endangered)
- 分類
- メジロザメ目 Carcharhiniformes > シュモクザメ科 Sphyrnidae > シュモクザメ属 Sphyrna
- 危険度
- シャークアタックの回数
- 17件のサメ事故(1580-2020年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 0件のサメによる死亡事故(1580-2020年)。1982年8月29日に長崎で起きたサメ事故「天草遊泳中女子中学生サメ襲撃死亡事故」の犯人がシュモクザメの一種とみられているが、ISAFには記録されておらず、事故についての論文でも不明とされている。
- 大きさ
- オスは2.1〜3.4m、メスは2.9〜3.4m。平均的な全長は360cm
- 最大全長
- 最大4.3m
- 体重
- 〜152.4kg
- 平均寿命
- 10〜31歳。比較的短いとみられている。研究者によって見解が異なるため平均の幅が広い。
※サメの年齢を推定するのは難しく、多くのサメが過小評価されている可能性があるので今後さらに長くなる可能性もあります。
- 最大寿命
- 31.5歳(ブラジル沖の大西洋で捕獲)〜55歳(Ref.1)
- 繁殖方法
- 胎生
- 妊娠期間
- 9〜12ヶ月
- 産仔数
- 12〜41匹
- 幼魚の大きさ
- 31〜57cm
- 繁殖サイクル
- 毎年繁殖。春と夏に出産。
- 成熟年齢
- オス6歳
- 成熟サイズ
- オス:1.5m、メス:2.1m
- 歯の形状
- 歯が小さく鋸歯(きょし)状(のこぎりのような歯)。
- 泳ぐ速度
- 調査中
- 性格
- 人間を避ける。ダイバーのブクブク音が嫌い。
- サメの生態
- 大きな群れの中では体の大小で力関係がある。社会行動をもつ。
- 1日の過ごし方
- 日中は海岸線の近くで過ごし、夜の間は沖合や深海にとどまる。
- 好きな食べ物
- イワシ、アナゴ、多くのサンゴ礁の魚、イカ、タコ、甲殻類、ツマグロ、カスザメ、アカエイなどの小さな板鰓類(ばんさいるい)。
- 海の仲間のお友達
- 同じアカシュモクザメ同士で数百匹という数で群れるのが好き。
- 生息年代
- およそ5600万年前から3390万年前までの始新世の化石記録にSphyrnalatidensとして記録。(Ref.2)
- 発見された年
- 1834年
- サメが住んでいる水深
※水深200mの深海を星5と評価
- 巨大ザメ指数
※最大全長が5m以上のサメを星5と評価
- 水族館で会える可能性
- ペットとして飼育できる可能性
アカシュモクザメと人間との関わり
アカシュモクザメは遠洋漁業、小規模はえ縄、巻き網、刺網漁業のターゲットおよび混獲によって世界中で漁獲されています。
そのため多くの地域で個体数が減少していますが、北西大西洋とメキシコ湾では個体数の回復の兆候があるようです。
水産庁の主要港におけるサメ類種別水揚量によると、日本でのアカシュモクザメの水揚げ量は1992年に41トン、2000年に34トン、2020年に34トンとなっています。
2003年以降はアカシュモクザメの水揚げ量が4〜20トン程度に落ち込む年が以前より多くありますが、2019年は48トン、2020年に34トンなので、全体としてみると日本周辺のアカシュモクザメの個体数は他の海域ほど減少はしていないのかもしれません。
保全状況
アカシュモクザメは絶滅危惧種?
アカシュモクザメは絶滅危惧種:深刻な危機(CR / Critically Endangered)と評価されています。
絶滅 | 絶滅危惧種 | 絶滅リスクは低い | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1.絶滅(EX) | 2.野生絶滅(EW) | 3.深刻な危機(CR) | 4.危機(EN) | 5.危急(VU) | 6.準絶滅危惧(NT) | 7.低懸念(LC) |
どこにもいない | ほぼ絶滅 | かなりやばい | やばい | やばそう | そろそろやばい | 今は心配なし |
メガロドン | - | ヨゴレ、シロワニ、アカシュモクザメ | アオザメ、ニタリ、レモンザメ | オオメジロザメ、ホホジロザメ、クロヘリメジロザメ | イタチザメ、ヨシキリザメ | ネコザメ |
- | - | イリオモテヤマネコ、ラッコ | トキ、トラ | パンダ | トド | - |
- | - | - | ニホンウナギ | クロマグロ | - | ブリ |
※この他に、データ不足で正しく評価できない情報不足種 (DD / Data Deficient)、まだ評価がされていない未評価種 (NE / Not Evaluated)というふたつのカテゴリーがあります。
※IUCNレッドリストでは、未評価種 (NE)、情報不足種 (DD)、低懸念(LC)、.準絶滅危惧(NT)、絶滅危惧種(危急、危機、深刻な危機)、野生絶滅(EW)、絶滅(EX)の9つのカテゴリに分類しています。
※レッドリストについては『絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ【2021年10月版】』で解説しています。
IUCNレッドリストではアカシュモクザメを絶滅危惧種:深刻な危機(CR / Critically Endangered)と評価しています。
絶滅危惧種のサメの種類とは?IUCNレッドリストのまとめ【2021年10月版】
ワシントン条約(CITES)
アカシュモクザメは2014年9月14日にワシントン条約(CITES)の附属書Ⅱに掲載されました。
ワシントン条約(CITES / サイテス)のリストに掲載されたサメ類と日本の対応について
危険性
- 危険度
- シャークアタックの回数
- 17件のサメ事故(1580-2020年)
- サメの攻撃が原因の死亡事故
- 0件のサメによる死亡事故(1580-2020年)。1982年8月29日に長崎で起きたサメ事故「天草遊泳中女子中学生サメ襲撃死亡事故」の犯人がシュモクザメの一種とみられているが、ISAFには記録されておらず、事故についての論文でも不明とされている。
インターナショナルシャークアタック(ISAF)の記録によると、アカシュモクザメによる挑発されていないサメの攻撃による事故の回数は17件(1580-2020年)となっており、アカシュモクザメの攻撃が原因の死亡事故は0件です。
アカシュモクザメは、ダイバーが接近したときに脅威の姿勢を示す場合もあれば、攻撃的な行動を示さない場合もあると報告されています。
インターナショナルシャークアタック(ISAF)の統計にはありませんが、1982年8月29日に長崎で起きたサメ事故「天草遊泳中女子中学生サメ襲撃死亡事故」の犯人がシュモクザメの一種といわれています。
アカシュモクザメの危険性が気になる人は『アカシュモクザメは人食いザメなの?人間への危険性は?』をどうぞ!
アカシュモクザメの生態や特徴とは
アカシュモクザメは沿岸部だけではなく、深海でよくみられることもあり水深1000mの深さでも記録されています。
一方、沿岸域や海水浴場の近く、河口にも生息していることが観察されています。
日本でもアカシュモクザメはときどき海水浴場付近に現れてニュースになることがありますよね。
アカシュモクザメは一日のほとんどを沿岸で過ごし、夜には沖合に移動してて狩りをします。
大人のアカシュモクザメは大部分の時間をを沖合で過ごします。
アカエイを食べるため、アカシュモクザメの口や消化器系には、50本以上のアカエイの棘が刺さっていることがあります。
見た目の特徴
アカシュモクザメは一度見たら忘れることのできない外見が特徴です。
まるでハンマーのように飛び出した頭部、またおなか側から顔を見るとまるでスピルバーグ監督の傑作映画『E.T.』のような地球外生物のような独特の雰囲気があります。
他のシュモクザメとの違いを知りたい人は『アカシュモクザメとシロシュモクザメの違いは?シュモクザメ9種の特徴も紹介!』をどうぞ!
アカシュモクザメとシロシュモクザメの違いは?シュモクザメ9種の特徴も紹介!
アカシュモクザメとシロシュモクザメとの違いはどこ?見分け方は? 一見同じようにしか見えないシュモクザメ。 実は前頭部(ハンマー)の部分をよく見ると少し違いがあるんです。 Aのシロシュモクザメの頭の図: ...
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アカシュモクザメの社会性
アカシュモクザメは、同種のアカシュモクザメ同士で複雑な社会行動を行っています。
大きな群れで行動するのは繁殖行動が関係しているようです。
また、堡礁(ほしょう)型サンゴ礁(グレートバリアリーフのような海岸からやや離れた沖合いに存在するサンゴ礁のこと)で外部寄生生物に体を掃除してもらう様子も目撃されています。
大きな群れの中では体の大小で優劣もあるそうです。
アカシュモクザメの分布と生息域
- 分布域
- 大西洋、インド洋、太平洋を含む熱帯の温水地域で世界中で見られる遠洋性のサメ。
- 日本国内での分布域
- 青森県より南の太平洋側、茨城県、千葉県、東京湾、神奈川県茅ヶ崎市の沖合、伊豆・小笠原諸島、伊豆下田沖の神子元島、愛知県、高知県、長崎県、鹿児島県、沖縄県・与那国島と与論島
- 生息域
- 主に外洋に生息。大陸や島の棚の近くにも生息し、湾や河口にも入ることがよくある。海水浴場付近での目撃も。
- 水深
- 0〜1000m
分布域
大西洋西部では、このサメはニュージャージー(米国)からメキシコ湾やカリブ海を含むブラジルにまで及びます。
地中海からナミビアまでの東大西洋。インド太平洋での分布には、南アフリカから紅海、インド洋全体、日本からニューカレドニア、ハワイ、タヒチまでが含まれます。
東太平洋では、南カリフォルニアからエクアドルまで、ときにはペルーまで見られます。
生息域
世界的に見られ、暖かく、温帯で、熱帯の海の沿岸に生息しています。
沿岸部にいることが多いですが、河口域や塩湖(水1l中に 0.5g以上の塩類を含む湖)に生息していることもあります。
大陸棚からかなり離れたグランドバンク(大西洋北西部、カナダのニューファンドランド島の南東に広がる魚類が集まる浅瀬、断頭の円錐形の海山)上辺でもよくみられます。
通常は水深0〜25mを好みますが、水深1000mの深海でも発見されています。
タンザニア沖のインド洋西部の深海にいたアカシュモクザメ
1000m以上の深さで遠隔操作無人探査機(ROV)によって撮影されたアカシュモクザメです。
これはアカシュモクザメの最も深い記録となっています。
アカシュモクザメを水族館で見たい
アカシュモクザメは水族館でよく見かけるサメの一種です。
特に、東京都の葛西臨海水族園では数も多く、水族館のマスコット的なキャラクターの一員なのかグッズも発売されています。
- 葛西臨海水族園
- 八景島シーパラダイス
- のとじま水族館
- 大阪海遊館
- しまね海洋館
- 海の中道水族館
- 大分マリーンパレス
※最新の飼育情報については各水族館が発信している最新情報や日本動物園水族館協会の公式サイト内の飼育動物検索でアカシュモクザメを検索してみてください。
また生きものの状態によっては展示してない場合があるので注意しましょう。
葛西臨海水族園とシュモクザメ
「上野水族館からの宿題 シュモクザメの展示」によると、葛西臨海水族園の前身である上野動物園水族館では、一番大きな水槽で主に小笠原で採集したサメを展示していました。ガラパゴスザメやメジロザメといったサメが何匹も展示されていたものの、シュモクザメの展示はなかなかうまくいかなかったそうです。
小笠原からの船での輸送もなかなかうまくいかず、シュモクザメの輸送、長期飼育は水族園への宿題となっていました。
今では多くのアカシュモクザメが来館者を迎えてくれる葛西臨海水族園ではいろいろな苦労があったんですね。
おわりに
魚の社会行動はわたしが大きな関心をもっている分野です。
アカシュモクザメの社会性などについては今後も随時更新していこうと思います。
参考文献一覧
(2)FossilGuy.com,“Your guide to Fossil hunting and Paleontology - Fossil Hunting Locations, Guides, Identification, Information, and More!” 2021年6月26日に閲覧